「Delay Lama」(2002年にAudioNerdzが公開したフリーVST)を覚えていますか?画面上でアニメーションするチベット僧侶が、X/Yパッドの操作でピッチと母音を変化させて歌う、というインパクト抜群のフォルマント・ボーカルシンセです。DAWの世代交代でとっくに動かなくなってしまっていたこの名作が、開発者JonET(Jonathan Taylor)氏により、現代のDAW向けにオープンソース・リメイクとして復活しました。
最新・最近の無料配布情報
2026年6月4日更新。JonET『MonkSynth』がGitHubにてオープンソース(MITライセンス)で無料公開中。Windows / macOS / Linux 対応のVST3 / AUプラグイン(現在ベータ版 v0.2.0-beta.2)。
この記事の最終更新:2026年6月4日
『Delay Lama』とは(前提)
Delay Lamaは2002年にAudioNerdzから無料配布された、いわゆる"伝説のフリーVST"の1つです。X/Yパッド上にチベット僧侶のキャラクターが浮かんでいて、その僧侶の口の位置を動かすとピッチ(縦軸)と母音(横軸)がリアルタイムに変化する、というユニークなインターフェース。フォルマント合成(FOFシンセシス)を使った独特の"人間の声に似ているけど明らかに人間ではない"サウンドが、エレクトロニカ・IDM・実験音楽系のプロデューサーに広く愛されました。
しかし開発が長期間止まったことと32-bit時代のプラグインということもあり、64-bit DAW環境ではほぼ動作不能の状態に。"伝説の絶版プラグイン"扱いとなっていました。
MonkSynthの位置付け
JonET氏が「自分が大好きだったあのプラグインを、現代のDAWでも動かしたい」というモチベーションで、ゼロから新規開発したオープンソース・リメイクです。Delay Lamaそのものの移植・改造ではなく、同じFOF(Formant-Wave-Function)合成方式を採用し、サウンドキャラクターのDNAを継承した「精神的後継機」というスタンス。
MonkSynthの主な特徴
X/Yパッドでピッチ × 母音をリアルタイムコントロール
オリジナル同様、メインのインターフェースは2次元のXYパッド。縦軸でピッチ、横軸で母音を連続的に変化させられます。マウスでXYパッドをぐりぐり動かすだけで「アー」「イー」「ウー」が滑らかに移り変わる、あの独特の"歌"が再現されます。
新規追加された機能
- ステレオディレイ内蔵:オリジナルにはなかった空間系エフェクトを内部に搭載。Delay Lamaの「Delay」の部分を意識した実装
- ADSRエンベロープ:音の出方をしっかりエディット可能
- ユニゾンモード:最大10ボイスのデチューン・ユニゾンで厚みを足せる
- ファクトリープリセット 5種:出発点となるサウンドが用意されている
- MIDIフル対応:Note on/off、ピッチホイール、CC1(ビブラート)、CC5(グライド)、CC7(ボリューム)、CC12(ディレイ)、CC13(ボイス)等を網羅
- ±12半音のオートメート可能なピッチベンド
- スキン(テーマ)のカスタマイズ機能:オリジナル風のチベット僧侶スキンを別途読み込んだり、自作スキンを使ったりできる
注意:スキンは「同梱されていない」
MonkSynth本体にはクラシックなチベット僧侶スキンは標準で含まれていない仕様。コミュニティが配布しているクラシック・スキンを別途読み込むか、自分でスキンを作成する形になります。これは権利関係への配慮と、オープンな拡張性を優先した設計判断と思われます。
対応環境
- プラグイン形式:VST3 / AU
- 対応OS:Windows / macOS / Linux
- インストーラー:macOS用の.pkg、Windows用の.exe、Linux用の.vst3直接バイナリが提供
- 動作するDAW例:主要なVST3/AU対応DAW全般(GarageBandを含む)
ダウンロード方法
GitHubのリリースページから、お使いのOS用のインストーラーを直接ダウンロードします。MITライセンスのオープンソースプロジェクトなので、商用利用・改変・再配布も自由(ライセンス表記の維持は必要)。
●JonET/monksynth Releases ページ
●プロジェクトTOP(README / ソースコード)
こんな方におすすめ
- オリジナルのDelay Lamaを使っていた、または音は知っているけど現行DAWで動かせなくて困っていた方
- フォルマント・ボーカル系の独特なサウンドを試してみたいプロデューサー
- エレクトロニカ・IDM・実験音楽・サウンドデザインのジャンル
- 無料でユニークなインスト音源を増やしたい方
- オープンソースのオーディオプラグイン開発に興味があるエンジニア
ベータ版なので将来仕様変更や不具合修正の可能性はあるものの、「使ってみる」ハードルは限りなく低い状態。Delay Lamaが好きだった人にとっては嬉しい復活、知らなかった人にとっては音作りの引き出しを1つ無料で増やせる機会です。