Traktor PlayはNative Instruments社が2025年にリリースした新しいエントリー向けDJソフトウェア。Traktor Pro 4の廉価版に位置します。
本記事では、筆者がTraktor Playについて調べたついでに、Traktor PlayとProの違いを趣味レベルでDJを楽しむ方にわかりやすいようにまとめて共有します。
Traktor Play

Traktor Pro 4

記事執筆地点で筆者はまだPlayを持っていないです。公式情報を中心に好きにまとめた情報をここで共有します。
違い1. 価格と提供形態
| Traktor Play | Traktor Pro |
|---|---|
| 7,600円 - $49/€49 | 22,900円 - $149/€149 |
Traktor Playは単体購入で税込7,600円、$49/€49。一度購入すれば追加課金なしで利用できます。Pioneer(AlphaTheta)社製のDDJ-FLX2やFLX4コントローラーを購入すると無償ライセンスが付属するとのことです。
Traktor Pro(4)は単体購入は税込22,900円、$149/€149。上位モデル相応の価格ですが、Traktor Playユーザーは差額を支払うことでプロ版にアップグレードできます。またNative Instruments製の上位機種DJコントローラーには無償で付属する場合もあります。
違い2.デッキ数
| Traktor Play | Traktor Pro |
|---|---|
| 2デッキ | 4デッキ |
デッキ数: Traktor Playは2デッキ専用のシンプルな構成です。一方、Traktor Pro 4は最大4デッキまでです。
違い3. Stems対応範囲
| Traktor Play | Traktor Pro |
|---|---|
| ドラムを分離できる(要検証) | ドラム・ベース・メロディ(楽器)・ボーカルを分離できる |
Traktor Pro 4ではiZotopeのRX技術を使ったステム分離機能を搭載しているのが特徴。再生中のトラックをドラム・ベース・メロディ(楽器)・ボーカルの最大4パートに分離して個別に音量調整やミュート、エフェクト処理できます。
これにより例えばボーカルのみ抜き出したり、ドラムとベースだけ残してミックスするといったリミックス的手法を扱えます。
Traktor Playのステム機能は簡易版で、ワンボタンでドラム音をミュートできる程度に限定されています。
違い4. ストリーミング対応
| Traktor Play | Traktor Pro |
|---|---|
| Beatportに対応(要検証) | Beatport/Beatsource.comに対応 |
近年主流の楽曲ストリーミング機能は両製品に搭載されています。
Traktor PlayはBeatportのストリーミングに対応。ログイン不要で最大2分間の楽曲プレビューを再生できる機能がついているので、手持ち曲が少ない初心者がとりあえず慣れるのにも最適。さらに新規ユーザーはBeatport Streamingの「Advanced」プランを2ヶ月無料体験できます。
Traktor Pro 4ではBeatportに加えて姉妹サービスのBeatsource(オープンフォーマット向けストリーミング)にも対応しています。Pro 4でもBeatport上のトラックをログインなしで2分プレビューでき、2ヶ月分の無料サブスク体験が付属します。
rekordboxなど他社ソフトに比べると対応サービス数は少なめですが(rekordboxはTIDALやSoundCloudにも対応)、Traktorシリーズとしては初めて複数の主要ストリーミングサービスに公式対応しました。
違い5. 対応ハードウェアと接続性(要検証)
| Traktor Play | Traktor Pro |
|---|---|
| NI純正コントローラー DDJ-FLX2/4 Reloop Ready / Reloop Buddy PC単体 | DVS対応 主にNI純正コントローラー 古めのPCDJコン若干数(対応リスト) |
Traktor PlayはPC単体での操作に対応し、キーボード・マウスだけでもDJできます。
公式で対応を発表しているのはNI製コントローラー以外にDDJ-FLX2/4、Reloop Ready / Reloop Buddy。対応ハードは今後増やしていくとのこと。
Traktor Pro 4はDVS(デジタル・バイナル・システム)に対応しており、アナログターンテーブル+タイムコードレコードや外部ミキサーを用いた本格的なセットアップが可能です。
またPioneerのCDJやクラブ標準ミキサーとの互換対応はかなり頑張っており、多くの業務用DJ機材でプラグ&プレイできる柔軟性があります。一方で、一般的な市販DJコントローラー全般に関してはSeratoやrekordboxほど網羅的ではない印象。主にNI純正コントローラーに最適化されています。
違い6. ループ・ホットキュー・パターンプレーヤーなどの機能
基本的なループ機能やホットキューは両製品とも搭載しており、トラック内の好きな箇所をマークして瞬時にジャンプしたりループ再生してリミックス的な演出ができます。違いは主に高度なパフォーマンス機能の種類と範囲です。
Fluxモード
両方に搭載。一時的にホットキューやループでトリッキーなプレイをしても、解除すれば元の再生位置にシームレスに戻れる機能。
Pattern Player
Traktorソフトの機能で、DJプレイ中にドラムパターンなどのループフレーズを重ねられます。Pro 4では複数のドラムキットを搭載し、RebekahやChris Liebingといったアーティスト提供のサウンドセット(808/909などクラシックマシンのキット含む)が使えます。一方Play版は簡易的な808ドラムキットのみが収録されています。
Remix Deck
Traktor Proシリーズが搭載している「Remix Deck」機能は、サンプル音源やループをトリガーして楽曲と同期演奏できるツールです。
Traktor Pro 4では引き続きRemix Deckが利用可能で、4デッキのうち2つまでをRemix Deckに切り替えてドラムループやボイスサンプルをリアルタイムに重ねる、といったパフォーマンスができます。Traktor PlayにはRemix Deck機能が搭載されていない模様(要検証)。
違い7. エフェクトの質と種類
| Traktor Play | Traktor Pro |
|---|---|
| reverb, delay, gater Mixer FX (filter) | 40種以上 |
Traktor Playには3種類のエフェクト(リバーブ、ディレイ、ゲーター)を搭載しています。さらに各デッキにはワンノブ式のフィルター「Mixer FX」が1基搭載されています。
Traktor Pro 4では40種類以上のエフェクトを搭載。4つのエフェクトユニットに複数のエフェクトをアサインし同時掛けすることも可能です。Mixer FXも各チャンネルに搭載されており、Play版より種類が豊富(ノイズやビットクラッシュなど含む)でポストフェーダー処理にも対応しています。
【要検証】Pro 4では新たにiZotope社のOzone Maximizer技術をマスター処理に導入した「Ozone Maximizer」が搭載されており、ミックス全体の音圧を上げつつクリッピング歪みを防ぐリミッターになっています。Traktor Playにもマスターリミッター自体はありますが、「Ozone Maximizer」という文字が見当たらないためごく基本的なものである可能性があります。
誰のためのDJソフトなのか【ターゲット層の違い】
従来、Native Instrumentsも無料の簡易版「Traktor DJ」(モバイル/デスクトップ両対応)を提供していましたが、こちらは2024年に終了しています。今回、後継の入門ソフトとして有料ながら機能強化されたのがTraktor Playといって問題ないでしょう。(なによりFLX-2/4に付属しますし)
シンプルな操作体系で「必要なものは一通り揃っているが複雑な機能は削ぎ落とした」設計のため、まず初心者にとっては使いやすいものになっているはずです。
しかし、Pro 4はほかと比べてもライブリミックス的表現に長けたソフトであり、DJをしながらその場で曲を再構築したり変化をつけたいクリエイター気質の中上級者に適したものでした。逆にそこまで高度なことはしないという方であれば、初心者でなくともTraktor Playが過不足ない選択肢となるかもしれません。
Traktor Play

Traktor Pro 4

